「Who Gets What」を読んで

この書は2012年にノーベル経済学賞を受賞したアルビン・E・ロス氏が著したものであり、元になっているマーケットデザインという学問は実際に私がゼミで専攻している分野でもある。マーケットデザインとは英語でMarket Designであり、文字どおり市場の設計を科学的に行うことで実社会において自然に解消されない問題を解決しようという試みである。本書では、マーケットデザインの一分野であるマッチングデザインを主としながら、アメリカでの実際の実用例や失敗例を用いて、研究者だけではなく一般人にも理解できるように説明されている。
私は、このマッチングデザインおよびマーケットデザインが目指す最適で最効率的な組み合わせのシステムを実社会のあらゆる場面で達成してほしいと思う一方で、例えば就活や学校選びなどにおいては決して達成することができないのではないかと感じたている。
そもそもマッチングデザインによって最適で最効率的な組み合わせが達成されることによってもたらされるものとは、その組み合わせに関わるそれぞれの経済主体が完全に公平公正な環境のもとで比較され組み合わされることにある。例えば、実際にアメリカでマッチングデザインが導入されているという研修医配属先の病院とのマッチングにおいては、その制度の効用によって学生は戦略的に病院を選ぶのではなく自分が行きたいと感じる、より設備の整った病院を順番に選ぶことが最良の選択となる。それまでの制度では、例えば、全体の中ではかなり優秀な部類の研修医が、第一希望であった一番人気の病院での選考に落ちた結果、第一希望で定員が埋まってしまったという理由で第二志望の病院にも受け入れられないということが起こってしまっていたのだ。つまり実際は第二志望の病院を嘘によって第一志望として希望していれば配属可能であった、という嘘をつく行為にインセンティブが発生してしまっているのだ。その結果、より設備の整ったいい病院に配属されるためには各研修医は頭を使って戦略的に配属希望を出さなければならない。
このように、マッチングデザインが正しく作用することによって公平な競争を達成することができ、将来的には就活市場や結婚市場でも導入が目指されている。しかし、これらの市場は研修医と病院のものとは違い非常に大きくそして複雑である。企業内でも役職によって求める人材像が異なるであろうし、就活生によっても良い企業の基準はバラバラであろう。よって非常に細かいレベルでの市場を分析することが求められるマッチングデザインにおいて、就活や結婚市場での導入は将来的にも難しいのではないかと私は感じた。
しかし、私は実社会において自然に解消できない問題へのアプローチ、および誰にとっても公平な環境を作ることを目指すという点において非常に共感をし、卒業後直接この学問とは関わらずともこの考えは大切にしたいと考えている。

ike21

投稿者プロフィール

横浜国立大学
経済学部
マーケットデザイン専攻
学部4年
神奈川県横浜市

関連記事

話題をチェック

ページ上部へ戻る